我が輩が城主となりしばらくの時が過ぎた。
しかし、まだわからぬことがたくさんあるのである。
その中のひとつがこれである。
そう。
龍のお守りである。
説明文を読んでも今ひとつはっきりとしないのである。
わかるのは「英雄レベルが10以上になれば使える」ということと、
「闘技場で使用すること」のみである。
ドラゴンレベルとはなんであろうか?
その謎が解けるときがついにきたのである。
我らが英雄すきお二世がついにレベル10に到達したのである。
以降はすきお二世の日誌から抜粋することにするとしよう。
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俺はいつも通りに闘技場へと足を踏み入れた。
受付にはいつも通りの陰気な男が、いつも通りの陰気な笑みを浮かべて座っている。
「おい。兵長のすきお二世だ。リストをだせ」
いつもならば、男はすぐにリストを差し出し、俺はリストを前にしばらく迷うところだ。
負けを覚悟で賞金を狙うか、確実に勝てる相手でポイントを稼ぐか……。
しかし、この日は違った。
「たまには変わったのと戦ってみたくはないか?」
「何の話だ?」
「持ってるんだろ? あれを」
「だから何の話をしている?」
男の話は一向に要領を得ない。
「アミュレットだよ」
アミュレット?
すぐにはピンとこなかったが、一つだけ思い当たるものがあった。
「これのことか?」
俺は
龍のお守りを取り出した。
「やっぱりもってるんじゃないか。もったいぶるなよ」
「別にそんなつもりはなかったんだが……。で、これがなんなんだ」
「お前も曲がりなりにも英雄と呼ばれてるのなら一度は戦ってみたいだろ?」
「なにと、だ? はっきり言えよ」
もったいぶってるのはお前の方じゃないか。
「なにとってお前、ドラゴンとだよ。勝ちゃあそれなりにいいこともあるぜ」
「別に無理にとはいわない。腰抜けには腰抜けの生き方があるんだからな」
安っぽい挑発だ。
それにしてもこの俺がドラゴンと戦う日がこようとはな。
勝てるかどうかはわからんが、精一杯見せ物になってやろうじゃないか。
「よし。受けて立とう」
「そうこなくっちゃな。よし、じゃぁ、ここで待ってろ。準備が整い次第呼んでやる」
少しして俺の名が呼ばれ、
龍のお守りと引き替えに闘いが始まった。
俺の相手はレッドドラゴンだった。
口元でちらちらと炎が踊っている。
これまでに味わったことのない圧倒的な威圧感である。
心地よい緊張が俺を包みこみ、様々な邪念が少しずつ消えていくのを感じる。
今いる場所が闘技場であることすら忘れるほどに、意識は闘いに集中していった。
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今日は少し真面目に討伐日誌を書いておるかと思ったら、
戦いの記録はしごくいい加減なものであった。
レッドドラゴンが長剣や鞭を使って戦ったりはせんだろうよ。
戦いはすきお二世の勝利に終わったようだ。
さて、手に入れた憤怒の鎧はどんなものであるかな?
体力、知力ともに+6じゃと?
なかなか良いではないか。
でかしたぞ、すきお二世。
いつもこんな良いものが手に入るのであろうか?
これはもう一度試してみねばなるまい。
我が輩は大枚金貨15000枚をはたいて
龍のお守りを市場で買ってきたのである。
すきお二世対ドラゴン第二回戦である。
ここで我が輩の思惑は大きくはずれることとなる。
今度はブラックドラゴンが対戦相手となり、あっさりと負けてしまいおったのだ。
そして、負ければ当然なにものこらないのがこの世の掟なのである。
我が輩の金貨15000枚が……。
酒場の隠し部屋でも、こんなにも損したことはないのに……。
さすがの我が輩もショックが大きかったのである。
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