我が輩の国は非常に貧乏であるが故に、我が輩は色々と金策に頭を悩ませておるのだ。
最初に思いついたてっとり早い方法はあれだ。
酒場の隠し部屋である。
ギャンブルで一攫千金という奴であるぞ。
そこにはアサン大陸ドリームがはち切れんばかりにつまっておる。
我が輩はまず金貨
100枚を『大』に賭けた。
結果は『小』。
負けか。
次に
200枚を『大』に賭けた。
結果は『小』。
ふむ。
300枚損しているが我が輩はその程度ではひるまん。
次は更に倍、
400枚を『大』に賭けた。
結果は『大』。
よし。
結果として
700枚使って、
800枚手に入れたことになる。
100枚の儲けだ。
次はまた
100枚賭ける所から始める。
負けたら倍をかける。
勝ったら
100枚賭ける所から始める。
それを何度か繰り返し、
500枚ほど儲けた。
儲けてはいるが……細かい。細かすぎる。
我が輩の性に合わん!
一攫千金を狙ってやってきたのに、こんなちまちましたことはやってられん。
我が輩は『大』に
200枚賭けた。
結果は『小』だった。
良い良い。気にはせん。
我が輩は『大』に
200枚賭けた。
再び『小』だった。
最初に
500枚儲けているので、全体としてまだ
100枚の儲けが残る。
まだまだ余裕であるぞ。
我が輩は『大』に
200枚賭けた。
信じられないことにまたしても『小』だった。
これで
100枚の損害である。
次で
200枚勝てば
100枚の儲けであるな。
我が輩は『大』に
200枚賭けた。
……こんなことがあって良いのだろうか? 結果は『小』だった。
これで
300枚の損害であるな。
これだけ『小』が続いているんだ。次こそ『大』に違いあるまい。
ここで大きくかければ一気に負けを取り返せる。
500枚だ。『大』に
500枚だ。
ギャンブラーの誤謬。
そんな言葉が我が輩の脳裏をよぎった。
今現在
4回連続で『小』が出ておる。さぁ、次の5回目に『小』が来る確率は?
当然のことながら
50%だ。例え
100回連続『小』が出た後でも変わらず
50%だ。
これから
5回連続で『小』が出る確率である
3.125%と混同してはいけない。
だが……。
誤謬であることはわかっているが、しかし……。
我が輩は『大』に
500枚賭けた。
出目は……『小』。
やられた!
こんどこそ! 我が輩は『大』に
500枚賭けた。
『小』。
そんな馬鹿な!
もう後には引けない!
『大』に
500枚。
『小』。
まさかそんなことが……。
我が輩はすっかり無一文になっていた。
こんなことなら黙って剣士を
10体雇っておけばよかった……。
しかし、我が輩にそれほどの後悔はなかった。
なぜなら明日……今日の負け以上の勝ちをすればいい。
ただそれだけの話であるのだからな。
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