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俺は非常に不満だった。
水車訪問だと?
何故俺が今更水車回りをしなきゃならないんだ。
そんなのは新米英雄の仕事だろう?
俺が普通に狩りに行くならば、同じ時間で倍以上稼ぐ。
それだけじゃない。
金貨と一緒に資源だって持ち帰ってくることができる。
どっちが得かは火を見るより明らかだ。
それがわからない陛下じゃないだろう。
そう思っていた。
実際にここに来るまでは。
水車なんていつ以来だろうか?
青い空を背景に同じリズムで回り続ける水車。
はじける水に虹がうっすらと浮かんでいる。
川のせせらぎともまた違った激しく水のぶつかる音が耳と心に響く。
全てが懐かしかった。
昔はよく一人でおっかなびっくり来ていたものだ。
何時間もかけてようやくたどり着いたら、すでに金貨を回収されたあとで、
同じ道のりを手ぶらで帰っていく時のむなしさっていったら……。
そんなことを思い出しながら、いつまでもいつまも水車を眺めていた。
たまにはこういうのも悪く無い。
最近、モンスターを相手にしてばかりで心がすさんでいたような気がする。
もしかしたら、これは戦いに疲れた俺への褒美のつもりなのかもしれないな。
たまには陛下も粋なことをする。
しかし、ずっとこうしているわけにはいかない。
俺は金貨を回収すると帰る準備を始めた。
そのときのことだ。
俺はあるものを見つけた。
だが、俺はそのあるものと同じものをすでに一個バックパックに持っていたので、
「二個もいらないな」と思い、次にここを訪れた人の為に残して帰ることにしたんだ。
でも
「そのまま置いておくのも芸がないか」と思い直し、こっそりと隠しておくことにした。
果たしてこれを見つけることはできるかな?
簡単には見つからないだろうという自負がありながらも、
早く誰かに見つかると良いなとも思う。
それを見つけた人の驚きと喜びを想像してなんだか楽しくなった。
俺は少し良いことをした気分になり、気持ちよく帰路についたのである。
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すきお二世は何を考えておるのだ!
いくらすでに一個持ってるからといっても、捨てて帰ることはないであろう!
売ったとしてもたかだか金貨5万枚。
今となっては大金という程のことではないのは確かである。
しかし、むざむざ誰かにくれてやるには惜しい金額であるぞ!
そもそも、
すきお二世を水車に派遣したのは無限の銭袋狙いであったのであるぞ!
それ以上でもそれ以下でもない!
それを金貨を回収して終わりとは……。
それでは、何のために
すきお二世を派遣したのかわからぬではないか!
……金貨を回収?
いまさらながら、その言葉に我輩は違和感を感じたのである。
水車から一体どうやって金貨を回収してきておるのであろうか?
なんか知らぬが、金貨を持って帰ってくるゆえ、英雄を派遣しておったが、
どういうシステムなのであろうか?
我輩は
すきお二世を呼び出して聞いてみたのである。
「お主らはいつもどうやって水車で金貨を回収しておるのであるか?」
すきお二世は眉をひそめ、何かを探るような目で我輩をにらむ。
「何が言いたいのかよくわからないのだが……。用件がそれだけなら、俺は帰らせてもらう」
そういって無礼にも勝手に帰っていきおったのである。
珍しく我輩が真面目に聞いておるというのにどういう態度であるか!
いくら普段からどうでもいい用事で呼び出しておるからといって、
今日はいたって真剣な心持ちで不思議に思っていることを聞いたのであるぞ!
いつかやつを戒めてやらねばならぬのである!
それにしてもどうやって水車から金貨を回収してきておるのであろうか。
誰か知らんじゃろか?
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