「我輩の偉業を後世に正しく伝えねばならぬ」と唐突に思いついた。
しかし適当な歴史家が我が国にはおらぬのだ。
我輩の凛々しい顔を後世に残すだけであれば、
元お抱え絵師のpietro_殿に頼めばよいのであるが、
偉業を後世に残すためには文字が必要である。
いや、歴史家がいないことはないのであろうな。
ただ、我輩が信用するにたるものが一人もおらぬだけなのである。
仕方がないゆえ、自ら編纂することにしたのである。
だがそこで我輩は、はたと困った。
我輩は後世に残すような偉業を達成しておらぬのである。
そうなると、話をねつ造する以外に方法はないのである。
歴史のねつ造。
戦争の勝者ならば誰しもしていることであろうが、簡単な様で難しい。
本当のことを書くのであれば問題はない。
ありのままのことをかけば、それで良いのである。
しかし、ねつ造するとなると違う。
明らかに事実とされていることと食い違いがあるとまずいのである。
それこそ戦争の勝者ならば、事実を記された書を焼き捨て、
後世に残さないという力業が使える。
後の世にとっては残った記録こそが事実である。
残念ながら我輩の国にそれだけの力はないのである。
ある程度は、史実に合わせて記さねばならない。
そこで「我輩はこの世界についてどの程度のことをしっておるだろうか?」と自問するのである。
例えば……六大種族とは?
エルフ、ヒューマン、アンデッド、ダークエルフ、ドワーフ……。
あと一つはなんであるのか?
悪魔……であろうか?
いや、どこかで6大種族が争っているところに、
悪魔が襲ってきたというような記述を見たことがあるような気がするのである。
悪魔は6大種族とは別と言うことである。
例えば……天空の城はいかなる種族の城なのであろうか?
光の城はヒューマン。露深き丘はアンデッド。銀月の海岸はエルフ。
闇の都はダークエルフ。炎の城はドワーフ。
では、天空の城は?
我輩は自らの住むこの世界に対してあまりにも無知であることに気がついた。
明日から、アサン大陸の歴史や偉人について勉強していきたいと思うのである。
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